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猪と夫婦になった男

猪 Photo by mape_s

 インドネシア、モルッカ諸島の神話。

 モルッカ諸島のハルマヘラ島に住むある男が畑の番をしていて、畑を荒らしに来た猪を見つけた。男は猪を槍で突いたが、猪は槍が刺さったまま逃げた。次の日、男は手負いの猪を追跡し、岩の深い割れ目を発見した。
 割れ目に入り、降りていくと、町があった。その町の1軒の家の戸口に自分の槍が立てかけてあるのに気がついた。その家のなかからは病院のうめき声が聞こえる。家のなかからその家の主人らしき男が出てきた。

 家の主人らしき男は、男が娘を傷つけたことをなじり、娘の怪我を癒し、そのうえで娘と結婚しなければならないと言う。見ると、猪の毛皮が垂木に掛けられていた。この国の人々は地上に赴くときは、この猪の毛皮を身に付けて出かけるのだ。
 男は言われるがままに、娘の怪我を癒し、結婚した。しばらくして男は故郷が恋しくなり、一度地上に行きたいと言うと、妻は猪の毛皮を身に付けて行けと言う。男はその通りにしてときおり地上に赴いた。

 こうして3ヶ月ほどが経ったある日、男は猪の毛皮を身に付けて、他の者たちと地上に赴いた。そのとき、男は、「目を開けろといわれるまで目を開けてはならぬ」と言われ、「猪が畑を荒らしに来たら、槍や弓矢など使わず、ただ口でこの畑に来てはならぬ、他へ行けと言え」と言われた。

 男がその通りに言って目を開くと、男は自分の畑におり、もとの人間の姿になっていた。男はそれ以来、地下の妻と会うことはなかった。

◆ 参考文献

大林太良・伊藤清司・吉田敦彦・松村一男 編『世界神話事典』角川書店

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