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鹿と夫婦になった男
Photo by Noël Zia Lee
ブラジル先住民、ボロロ族の神話。
大昔、ゴクルグワという男がいた。ゴクルグワが川で魚を捕っているとき、精霊の小亀を目にし、矢を射た。小亀は怒り、大洪水をひきおこした。ゴクルグワは人々に逃げるように警告し、それから火のついた薪を手に持ち、ひとり一番高い山の頂に避難した。人々はゴクルグワの警告を聞かず避難しなかったので、みな溺死した。
やがて増水は止んだので、ゴクルグワは薪で火を起こし石を熱して、その石を水の中に投げ入れた。すると、水は引き、大地が現われた。ゴクルグワは山を下りて人々を呼んだが、やってきたのは小さな牝鹿だけであった。ゴクルグワは牝鹿と結婚し、たくさんの子を生した。
子供たちのなかには鹿の鼻面や足や毛をもつ者がいた。それらの者はエセラエとトゥガレジェの二つの族に分けられ、エセラエ集団の女はトゥガレジェ集団の男と、トゥガレジェ集団の女はエセラエ集団の男としか結婚してはならないと決められた。
◆ 参考文献
大林太良・伊藤清司・吉田敦彦・松村一男 編『世界神話事典』角川書店