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ライオンと亀の競争
Photo by Zevotron
スリランカに伝わる話。
あるとき、小川の岸辺で亀とライオンとが会い、亀はライオンに「汝がこの川を跳び越えるよりも疾く予はこの川を泳ぎ渡ってみせよう」と言った。ライオンは怪しみ、日を定めて競争することを約束した。
その間に亀はその親族のある一亀と相談し、当日、その亀を川のこちら側にいさせ、自分は川の向こう側にいて、おのおのラトマルという花のつぼみをひとつを口中に含むこととした。
約束の日になって、ライオンは川辺に来て、競争を始める。ライオンが川を跳び越えてみると亀はすでにいる。また戻ってみるとやはり亀がすでに渡り着いている。同じ花のつぼみをひとつ含んでいるから2匹の別々の亀を同じ1匹の亀と見のだ。
ライオンはやけくそになり、「どちらかが疲れ果て動くことができなくなるまで何度も何度も試してみようじゃないか」と言うと、亀は一向動かずに2匹別々に両岸に坐っていればよいのだから異議なく「さあ、試そう」と答えたので、ライオンはあちら岸へ飛んだりこちら岸へ飛んだり。何度飛んでも亀が先にいるのでついにライオンは死んでしまった。
◆ 参考文献・参考サイト
南方熊楠『十二支考〈上〉』岩波文庫