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カリスト、アルカス
Photo by Tambako the Jaguar
オリンポスの十二神のひとりで、人間を含む地上の動物の多産を守護する女神アルテミス。アルテミスは狩猟好きな女神で、弓矢を持ち、ニンフ(山河草木の精霊。美しい女性の姿をしている)たちを従えて山野を駈け巡りました。
アルテミスは処女神であり、従者のニンフもみな一生処女を守ることを誓ってアルテミスに仕えていました。
その従者のなかにカリストというひときわ美しいニンフがいました。カリストは、忠実さと狩りのうまさとで、アルテミスのお気に入りでした。
しかし、カリストはある日、オリンポスの主神ゼウスに見初められ、無理矢理犯されてしまい、ゼウスの子を身ごもってしまいました。
カリストは己を恥じ、アルテミスにこの出来事を話すこともできずにいましたが、数ヶ月の後に妊娠が発覚。アルテミスは怒り、カリストを追放しました。
カリストはやがて男児アルカスを生みました。しかし、このことがゼウスの妻のヘラの怒りを買い、ヘラはカリストを牝熊に変えてしまいました。
一方、息子アルカスは立派な若者に成長しました。ある日、アルカスは狩りをしていて、1頭の牝熊に出会いました。その牝熊は姿を変えられた母親であったのですが、そんなことは知る由もないアルカスは槍を牝熊に投げつけました。
それを目にしたゼウスは悲劇を未然に防ぐために、一陣の旋風を巻き起こし、寸前、母子を天にさらって夜空に据え、カリストを大熊座に、アルカスを小熊座にしました。
ところが、ヘラは、憎らしいカリスト母子が星になったことが気に入らず、大海の支配者でミズヘビの神オケアノスにカリスト母子を海に入らせないように頼んだ。このため、他の星座は一日に一度海に入って休息するのに、この母子の星座だけは海に入ることができなくなりました。
カリストはアルテミスの添え名(あだ名)でもあり(語意は「最も美しい」)、もともとカリストはアルテミス自身のことを指した言葉であったのかもしれません。カリストは熊に姿を変えられましたが、動物の神であるアルテミス自身も、とくに熊と深い関わりがありました。
※ 神話には様々なバリエーションがあります。アルテミスがカリストを牝熊に変えたとの説もあり、ゼウスが変えたとの説もあります。また、カリスト母子を大熊座・小熊座にしたいきさつについても他の説があります。
◆ 参考文献
山室静『ギリシャ神話—付北欧神話』社会思想社
大林太良・伊藤清司・吉田敦彦・松村一男 編『世界神話事典』角川書店